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【ART・ARCHITECTURE】ink gallery / ジョージナカシマ展〜吉村順三設計の邸宅
2022年4月 3日
ギャラリーを出て受付を通り過ぎ、同じく作品展示のために解放している茶室へ向かいます。
とその前に、建築について。。この建物は日本のモダニズム建築を代表する吉村順三の設計で、1974年に完成した個人邸。とはいえ今まで一般に公表されることはなく、現在の所有者であるYAECAのデザイナー服部さんが購入した時には廃墟同然だったのだそう。
…という話を数年前に特集された雑誌で見て、いつか見ることができたらなぁと思っていたのです。そして先日YAECAの店舗を訪れた時に、偶然この企画展の話を店員さんから伺いびっくり。建物を見学できるだけでもありがたいのに、さらにこの空間でジョージ・ナカシマの家具が置かれているのを見ることができる…なんて奇跡的な!
本棟は3階建てで、地中に埋まった1階が最初に訪れた受付部分、芝生と地続きになってみてるのは2階部分。ちょうど立っている下あたりに先ほどのギャラリーがあります。その先に見える平屋建ての茶室がもうひとつの展示空間、本棟から3年後の1977年に完成しました。
もちろんこちらも本棟と同じく吉村順三設計、かつ施工はロックフェラー邸(ポカンティコヒルの家)などでも協働した中村外二工務店!そういえばそのロックフェラー邸のためにジョージ・ナカシマが家具が多数の家具を制作していたことを思い出し、日本でお三方の生み出す空間を体験できるとは!とさらに驚くのでした。。
1930年代にアメリカから日本へやってきたジョージ・ナカシマは、アントニン・レーモンド事務所に入所して吉村順三とも共に働いたいわば盟友同士。モダニズム建築好きにはたまりません。
庭の意匠を見ても、個人邸として建てられたなんて信じられません。。
こちらは茶室ということで、先ほどのモルタルの空間とは打って変わって数寄屋造りの静謐な空間。
中央に置かれたのは「ミルクハウステーブル」。第二次世界大戦中に日系人収容所に収容されたナカシマは、レーモンドが見受けすることで出所。その後レーモンド所有の農場にあった小谷の名前が”ミルクハウス”。こちらもオリジナルに近づけた復刻版なのだそう。
いつも見ている北欧家具とはまったく異なるアプローチ、角度は違えどどちらも”木の美しさ”を考え抜いたフォルムであるのが素晴らしい。。
2台置かれた「コノイドラウンジ」は手前がローズウッド材を用いたもの、桜製作所が保有しているデッドストックを使ったのかと思いきや、インドから取り寄せた材とのこと。いやはやどの時代も木材商はグローバルなのだと驚いたり、輸入の手続きは大変だったのだろうなぁと家具屋目線になったり。
「ナカシマペーパーナイフ」素材はなんと黒檀、手に持つと想像よりも軽くて驚きます。
床の間に置かれたオブジェ「木の顔」は桜製作所の前会長である永見眞一氏のもの。見ていると顔がほころんでくるような、温かみがありますね。
数年前の改修時は本棟の荒れ具合と比べると茶室の方は状態が良かったそうで、大がかりなリノベーションはせずに補修程度だったのだそう。
この襖もクリーニングするだけで使用できたそうで、まるで京都の寺院で見る唐紙の襖のような味わいのある鳥の紋様も半世紀を経たものとは。
そして隣にあるもう一間は、期間中一組ずつ貸切のカフェスペースとなっていました。私たちももちろんウェイティングリストに記帳して待つことにしました。
時間が来て部屋に入ると扉が閉まり、私たちだけの贅沢な空間に。
おお!中村外二の技術をこんなにパーソナルな空間で味わえるとは。。
キョロキョロしているとやってきたのは、YAECAの営む洋菓子店SAVEURの「ガトーノワゼット」。
ヘーゼルナッツのコクと香りが口いっぱいに広がる。。確かな素材と丁寧な仕事、できあがったのは余計な装飾のない普遍的な味わいと…まるでYAECAのシャツのようです。
気がついたらかなりの時間が経過…生きた勉強タイムという、大切なひとときを味わうことができました。。
日本各地のモダニズム建築がなくなっていく昨今、配管から交換しなくてはならないほど大掛かりなリノベーションをしてまでこの建物を残してくれたことが嬉しく、そして特に公共施設ならともかく巨匠設計の個人邸を拝む機会なんて滅多にないので、感謝感謝でギャラリーを後にしたのでした。
【ink gallery(インクギャラリー)】神奈川県鎌倉市鎌倉山1-19-12