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【ART】アーティゾン美術館/空間と作品

2024年8月22日

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ランチの後は車で数分の京橋にあるアーティゾン美術館へ。

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前身のブリヂストン美術館から5年間の建て替え期間を経て2020年に開館したアーティゾン美術館。

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6階ロビーまで進むと同館デザインコレクションの倉俣史朗のチェア3種がお出迎えをしてくれます。そして開催中の展覧会は「空間と作品〜作品が見てきた景色をさぐる」タイトルだけでは一体どんな展示なのかが分からなかったのですが「美術品がどのように生まれ、どのように扱われ、受け継いでこられたのか、その時々の場を想像し体感する」という紹介文で、これは見てみたい!と足を運んだのです。

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円空《仏像》

まずお出迎えしてくれたのは円空の仏像、数年前に展覧会で見た柔和な表情が忘れられなかった円空仏にこんなところでご対面できるとは。こちらはもちろん”祈りの対象”として生まれたもの。修行僧の円空が諸国を行脚しながら掘った仏像は寺院や村人のためなど様々ですが、彫刻作品ではなく祈りの対象としての仏様だったことを、この展覧会のテーマのひとつ”どのように生まれ”から改めて考えさせられました。

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パブロ・ピカソ《腕を組んですわるサルタンバンク》

通常であればこれはキュビズムの後の新古典主義の時代の作品で…と解説があるのが常ですが今回は”どのように受け継がれ”の視点から。1923年に描かれてから様々な人の手を経て石橋財団コレクションへとやってきた本作、そのうちの一人がピアニストのホロヴィッツだったのだそう。ニューヨークにある一軒家のスタンウェイ社製グランドピアノが2台置かれたリビングに掛けられたこの絵画を、彼は何を思って見ていたのでしょうか。なんて考えると作品がより身近に感じますね。

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円山応挙《竹に狗子波に鴨図襖》

応挙の襖絵は大広間をイメージした畳敷の空間での展示。ガラスケースなど遮るもののない中で、当時を思い描いてじっくりと鑑賞できるこの贅沢さ。

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そして大空間に幾つかのブースで仕切られたここは、スタイリストの石井佳苗さんがインテリアと合わせて石橋コレクションの美術品と合わせた空間。

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夜更けにウェグナーのイージーチェアCH22に座り読書をする一コマ…と想像していると、

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テーブルの上には無造作にヘンリー・ムーアのブロンズ像があるではないですか!

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”空間と作品”が人の手を介して組み合わされることで、新たな関係性が生まれていますね。空間を生かす作品と家具の組み合わせ、石井さんの素晴らしい感覚を思いきり楽しみます。ブースごとの照明の使い方にも脱帽です。。

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一番印象に残ったのがこのブースで、イタリアのインダストリアルデザイナー、エットレ・ソットサスのサイドボードが2つもある贅沢空間。朱色と黒の作品は山口長男《累形》で、サイドボードと張り合うようでいて馴染んでいるのが面白い。国立近代美術館やポーラ美術館など彼の作品を目にするたびに素敵だと思っていたのですが、まさかソットサスと並んで見る日が来るとは。

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そんな横にちんまりと鎮座しているのはフランソワ・ポンポン《しゃこ》。館林美術館の再現されたアトリエで見た作品ものびのびとしていましたが、ここではお澄まし顔をしながらも落ち着いた表情です。すべてのブースはあくまで石井さんのスタイリングした空間だということは分かってはいるものの、ここに住む人はどんな人でどういう趣味でこの家具を選んでこの作品を集めたのだろうと想定の空想をするのも楽しかったです。

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会場は5階へと続き、こちらでは"どのように受け継がれてきたか"にフォーカス。青木繁《自画像》を含む彼の作品群は、もともと友人たちが所有していたもの。青木の死後に彼らで遺作展を開いたというエピソードも含め、ひとつひとつの作品を見つめます。

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その後も石橋コレクションに収まる前に誰が所有していたかを作品と合わせて紹介。パウル・クレーを所有していたのが建築家ミース・ファン・デル・ローエだったり、

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ブランクーシの石膏作品はロックフェラー所有だったりと驚きの連続です。こうして5階では所有していた人物をクローズアップし、作品の来歴が書かれることで作品に血が通ったように感じました。

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そして最後4階の会場では”作品にもっとも近い空間”である額縁にフォーカス。

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マティスの絵画には実に多様な雰囲気の額縁が組み合わされていますが、これは画廊が制作したもの?それとも自身?その他額にこだわる岸田劉生作品の特徴ある額は「劉生縁」なんて呼ばれていたり、

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さらなるこだわりの藤田嗣治は額まで自作だったそう!

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3フロアそれぞれにこだわりある見せ方で、単に作品を美術的に鑑賞するのでなく、より身近に興味深く対峙することができたとても楽しい展覧会でした。そして和洋新旧様々な作品を紹介できるのも石橋財団コレクションがあってこそのもの(すべてコレクションからなので撮影も可能でした)、また楽しいコレクション展を期待しています!

【アーティゾン美術館】東京都中央区京橋1-7-2

カテゴリー:ART&CULTURE

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