hanauta
【ART】江之浦測候所 @ 小田原
2019年4月22日
現代美術家の杉本博司さんが構想10年・着工10年の年月をかけて作られた、「江之浦測候所」へ行ってきました。
場所は小田原を過ぎたあたりの高台。周りは蜜柑畑に囲まれ、正面に相模湾、背後には箱根の大輪山を望みます。9,500㎡もの広大な敷地の中にはギャラリー棟、石舞台、茶室、門などが点在しています。
2ヶ月先まで事前にウェブ予約を承っている完全予約制のため、大混雑をすることなく見学ができるのがよいところ。この日はスペイン語を話す外国から来たご一行がいらしたほかは、個人のお客さまばかりでした。まずは待合棟にて説明を受けて、各自広大な空間を見て回ります。
「夏至光遥拝100メートルギャラリー」
まずは象徴となっているこちらの建物、長〜い100mの空間です。(今回はせっかくの素晴らしい景色なので、画像多めに紹介します!)
内部は片側に大谷石壁、もう片側は柱のないガラス窓と、海へと続く圧倒的な空間。ギャラリーということで、この時は自身の作品「海景」シリーズ数点が掛けられていました。
水平線を画面の真ん中に据え、世界各国の海を撮影する「海景」シリーズ。幼少時に熱海から小田原に向かう湘南電車から見た景色がこの海景シリーズにつながっているそうで、あぁ…だからこの地に集大成のような測候所を建てたのかと腑に落ちたのでした。
そう、ここは美術館でも、ギャラリーでも、はたまた建物を見るためでもない「測候所」。オープン当初にその名を聞いても、何を観測するのだろうかと疑問が残ったのです。。
なぜ測候所なのか、その答えはアートに原点に立ち返るため。
いただいた小冊子を見て、拙い頭で読み解くと…『 臨界点に達してしまった美術は表現すべき対象を見失ってしまった → 私たちはもう一度原点に立ち返るべきなのでは → その原点である本来の美術とは、人間の意識を提示するもの → 人間の意識は自分がその場に存在することを認識することから始まった → 天空を見て太陽や星の位置で自身の存在を確認 → 位置を確認する=測候所 』という流れなのです。
「石舞台」
そんな頭で考えると難しいことも、この心を揺さぶられる景色を見るだけで心の中にストン入ってくるものがあります。用いられた石は近くの小松石丁場後から発掘されたもの。江戸城のために切り出されたものが不要となり放置された石材とのことで、そういえば江戸城さんぽした時に伊豆石を使っていると話していたのを思い出しました。
先の写真の石舞台に登ったところからの景色。測候所の観点からの説明では、先ほどの「夏至光遥拝100メートルギャラリー」では夏至の朝に太陽光が通過し、ここは春分秋分の朝日が昇る軸線に合わせています。
「光学硝子舞台」
至る所にある”止め石”。英語での説明に「This stone means "No Entry"」と書かれていました。そんな日本ならではの古来の文化は、外国の方にはどう映るのでしょうね。
「夏至光遥拝隧道」
先ほどの場所から下に降りたところ。この70mの隧道を、冬至の朝の陽光が貫きます。この神々しいまでの景色…ここでも護王神社をデジャヴのように思い出しました。
こちらにも止め石!
「円形石舞台」
隧道の始点にあたるところ。冬至の真っ赤な光がここを一直線に駆け抜ける姿は、一度は見てみたいものです。冬至は世界各地で死と再生の節目とされる…それこそがアートの起源ということか。。
それぞれの建築物に使われている石そして工法なども細やかにパンフレットに書いてあり、歩きながらも気が抜けません。そんな風にひとつひとつを読み込んでいくと…とても時間が足りません。。
こちらは原美術館と同じ生垣!
「石造鳥居/茶室 雨聴天」
最初に出た「夏至光遥拝100メートルギャラリー」の下を抜けて、竹林のエリアへ〜。
もともとはみかん畑だった土地ということで、起伏のある場所。なかなかの距離なので、歩きやすい格好の方が良いようです。
「化石窟」
元は蜜柑農家の道具小屋だったところに、化石のコレクションが。測候所に使われている石や建具なども杉本さんのコレクションの古美術が用いられているのですが、ここへきて飛鳥時代、室町時代からググッと遡って、5億年前!?までやってきました。
最初はアーティストとして認識していた杉本さん、この場所へ来て古美術家としての彼とようやく結びついたようでした。
「数理模型0010」
数学上の双曲線関数を模型化したもの。見えないものを形にする作業は、無から作り出す芸術と同じということなのでしょう。難しい。。
「数理模型0004」
こちらも森美術館で見たのが最初だったのか…美術館で見るのとは、全く異なる雰囲気で、まさかスックと伸びる竹の中で再開するとは。
テクテクと歩いて高台へ、相模湾を望む絶景。敷地内の蜜柑畑でも収穫が行われていて、「化石窟」で無人販売もしていました。
「明月門」
室町時代に建てられたこの門も、根津美術館など紆余曲折を経て今はここに。
凛々しく良い表情をした、立派な鬼瓦!そして先の丸瓦には丸と三角を組み合わせた当館のマークが使われているのですね。
ちょうど菜の花が満開で、辺り一面に甘い香りが立ち込めていました。
時期や時間によってまた異なる表情を見せてくれそうな広がりを感じる施設ですが…こんな素晴らしい陽気の中で初めての見学ができて、本当に嬉しくもありがたい1日となりました。次は日の出の時間に集合する、特別拝観にお邪魔したいと思います。
- New Entry
- Category
- Backnumber
-
- 2024年12月
- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年9月
- 2024年8月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月